─接触1

□━
2ページ/13ページ

郁美とあんな関係になってからは買い物の場所を変えた。

この近くを歩いていたら郁美に会うのだ。
俺を捜して歩き回っているみたいだった。

ケータイのアドレスを教えてなくて良かった。

ふとコンビニの前で何かが動くのが視界に入った。

そっちに目をやると

「朔馬」

潤が立っていた。

「珍しいな。買い物か?」

無意識に指を強く擦り合わせる。

潤は笑顔で首を振って否定した。

「最近朔馬が早く帰るから何してるのかなって跡つけたんだ」
「ストーカーだな」
「否定はしないよ」

訊いてしまえば分かるのに。

お前は何がしたいんだと。

でもその答えを聞くのが怖かった。

俺じゃなくてもいい、みたいな答えを聞かされたら殴ってしまいそうだ。

だったら俺なんか要らないじゃないか。
気安く好きだとか言うな。

って。

玩具にされるのは嫌いだ。

「ねぇ朔馬」

潤は微笑んだまま俺に近付く。

ポケットに隠していた手を抜いて俺の手首を掴んだ。

痛い。

「あの女、誰・・・?」

目を見開く。

潤に見られた。

まさか郁美のアパートまでついてくるとは。

「な、何だよ。別に誰だっていいだろ」

目を逸らすと潤は人目をはばからずに俺の耳に口を寄せた。

「よくない」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ