─接触1

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「お前等べたべたしてて気持ち悪い」
「お前の顔面も充分気持ち悪いから安心しろ」

べたべたしてるつもりはない。

ふん、と鼻を鳴らして立ち上がった。

「さっさと行くぞ。お前のせいで映画2回分も逃してんだよ」
「俺ってばそんなに遅れたのかよ」
「アホ、時計見ろ。もう夕方だぞ」

八雲はへらへらしながら俺の手に千円札を握らせた。

許せと言うわけか。

「映画は今度にしてさ、飯食いに行かね?」
「は?」
「ぶっちゃけあの映画興味ないんだわー」
「殴るぞ」

誘ったのはそっちだと言うのに。
単なる暇潰しだったと言うわけか。

俺も大して興味なかったしいいか。
腹も減ったし。

この近くに新しい店がオープンしたとかでチラシが入っていた気がする。

「仕方ないからお前に奢らせてやる」
「俺の財布を爆発させる気かな?」

一発ド突いてやった。

俺は勝手にその店に入った。
八雲は文句も言わずについてくる。

「和食屋なんか久しぶり」

案内された席に座るとメニューを見ながら八雲が言う。

「たまにはいいかなって」
「家で和食とか食べる?」

今日は随分と質問してくる。

「コンビニ弁当だからなぁ」
「コンビニ弁当?親は?」
「そんなもんいない」

八雲はしまったと言うような顔をした。

久々に見たな。
誰かのこんな顔。

高校に入ってからはこんな話したことなかったから。

「何だよ。大したことないだろ」
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