─接触1

□━
2ページ/13ページ

後の2人は自分でモップを片付けていた。

体育館の掃除用具箱は大きくて余裕で人が2人は入るだろう。

「昨日のテレビ見たか?」
「昨日?ともちゃん出てたやつ?」
「そうそう!めっちゃ可愛かったよな!」

モップを片付けて先に前を歩く2人の会話に盛り上がりが出てきた。

2人にはともちゃんと言う共通の話題があるらしく、何を言ってもうんうんと大きく頷くのであった。

何だか懐かしく感じた。

俺が掃除参加をしていなかったせいか、帰ってくると廊下にも教室にも人の姿はなかった。

八雲の鞄もすでにない。

窓に近付いてグラウンドを見ると八雲が走り込みをしていた。

熱心な奴だ。
一生懸命な奴は嫌いじゃない。

ちゃんとやらなければと頭では分かっているのだが体が動かない。

授業は真面目に受けれるんだけど。

窓枠に肘を載せてふぅと息を吐いた。

すると背後から首に手を回されて急に首が重たくなった。

キュッとビニールを擦るような音がした。

「お疲れ様」

耳元で言われて振り返る。

「いちいちくっつくな気持ち悪い」
「嫌じゃないくせに」

潤は笑いながら手を離す。

「変態」

この言葉が潤を喜ばせる。

潤が拘束好きのマゾであることを知ったのは先週のことであった。

手足を縛られて感覚が麻痺するくらいにキスを繰り返された。

彼にとってキスなんか重要な行為ではなく、ただ単に俺を怒らせたいだけ。

悲しい奴だ。

恋人が出来たらどうするつもりだ。
キスが嫌いな女だったら?

キス魔って言われて嫌われればいい。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ