─接触1

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「待ってる」

にこりと笑みを向けられる。

俺はこの笑顔に弱い。

周りには向けない人懐っこい笑み。
この笑みを向けられるのは俺だけだ。

俺はノートを閉じて立ち上がった。

「後でノート見して」
「もういいの?」
「学食行くんだろ」

潤は嬉しそうな顔をして先に教室を出た俺を追いかけた。

食堂は既に混んでいた。
販売機の前には長蛇の列。

「お前何食う?」
「うどんにしようかな」
「じゃぁ俺は本日のオススメ。頼んどいてやるからお前席取っといてよ」
「分かった」

潤は頷いて空いてる席を捜しに行った。

彼が誰かの横を通る度に振り向かれる。

人間不公平に出来たものだとその流れをぼんやりと見ていた。

30分ほどしてようやく昼食にありつけた。
昼休み終了まであと30分しかない。

オススメの唐揚げを頬張りながら時計を確認した。

「時間気にしながら飯食うのも何かな」
「朔馬って意外と真面目だよね。10分前行動だもんね」

その分俺には自由時間が少ないわけだ。

「あ、そうそう」

潤が箸をくわえながらケータイをポケットから取り出した。
そして画面を見せる。

「レインボーラビットのライブがこの辺であるらしいんだ。朔馬も行くよね?」

レインボーラビットとは俺の大好きなB級バンドである。

曲は結構あるのだがCDを出していない為、ダウンロード購入をしている。

CDが出たら即行で買いに行くのに。
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