→素直

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拓は首を振って足を動かすと横まで来た。
俺の腕を抱き締めて顔を近付け、においを嗅いだ。

「圭ちゃんのにおいがするから落ち着く」

顔を離して爪先立ちをした。
頬に柔らかな唇の感触が残る。

拓は人目を気にせずにしてくる。
目だけで辺りを確認した。

誰もいないのを見るとちゃんと見てはいるのかな。

「前も同じようなこと言ってたけど、そんなにこのにおい好きなの?」
「うん。大好き」
「安いシャンプーなんだけどね」
「ううん」

袖を掴んで軽く引っ張った。

「圭ちゃんの体臭が合わさっていいにおいになるみたいなんだ」

体臭って・・・

「は、恥ずかしいからあまり嗅がないでよ」

やんわりと拓の手を払った。
拓は笑って手を放す。

「元の圭ちゃんに戻った」

疑問が顔に出ていたらしい。

「何だか圭ちゃんおかしかったから」

それに答えてくれた。

「俺が戻ってきたら、何か違ってた。圭ちゃんじゃないみたいで不安だったんだ」
「・・・そうかな」

中尾にも変わったと言われた。
自覚がないけど。

知らず知らずの内に拓への態度を変えてしまっていたのかもしれない。

彼が病院に言ってからは考え方も変わっていったし。

少なくとも彼が影響していることと言えよう。
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