→素直
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「おはよう、圭ちゃん」
「・・・あぁ」
空は紫色に染まっていた。
おはようの時間ではないのが分かった。
早く着替えないと母が来るかもしれない。
俺は動こうとしない拓を放ってジャージに着替えた。
「お前も早く着替えて帰りな。お腹空いたんだろ?」
「もうお腹いっぱいだよ」
ベッドから下りて部屋のドアを開けた。
涼しい空気が入ってきた。
「ねぇ」
振り返る。
拓はベッドから下りて俺の手を握った。
そして自分の頬に擦り寄せた。
「俺がいなくなったらさみしい・・・?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
それだけ言うと手を放してズボンを拾い上げる。
「帰るね」
ズボンを履くと俺をハグして部屋から出て行った。
ベッドに座り直して頬杖をつく。
悪人。
「また夏が来るね」
中尾はプリントの束をめくりながら言った。
その向かえで俺もプリントをめくる。
中尾は生徒会、俺はボランティアの作業を放課後に行っていた。
ボランティアと言っても、ただ中尾の居残りに付き合っていたら、担任に仕事を任されたと言うだけのこと。
明日使う全校集会のプリントのホチキス留め作業だ。