→素直

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「お母さんが準備してないからコンビニで買ってって。俺料理なんか出来ないし」
「俺が作ってあげたのに」
「圭ちゃんに頼らずに生活してみせますよ」

拓は使い捨ての丼に入った牛丼の蓋を開ける。
まだ湯気が立っていて温かい。

「圭ちゃんにはオムライス」

黄色い物体を差し出されたが受け取れるわけもなく目で訴える。

拓は、あぁと零すとスプーンですくって俺の口に持っていった。

「あーん」
「あーんじゃないよ!」
「オムライス、嫌い・・・?」

潤んだ瞳に映されて言葉を詰まらせる。

負けない!

「・・・外して。痛い」

口を尖らせて言う。

「駄目。圭ちゃん逃げちゃうもん」
「当たり前じゃないか。何だか身の危険を感じる・・・」
「意地張らないで口開けて?食べさせてあげるから」

スプーンを唇に触れさせて開けさせようとした。

「お・・・オムライスアレルギーだからいらない」
「自分で作ってたくせに」

ちらとオムライスを見た。

コンビニのものでも食べないんだと思えば美味しそうに見えてくるものであって、急激に腹が空く。

よく見たらデミグラスソースがかかっているではないか。

ごくりと唾を飲んだ。

「ん」

ぐいっと押されて口を開けた。

拓はスプーンを歯に当てないように入れる。

「美味しい?」
「外してくれたらもっと美味しい」
「もう」

拓は笑いながら次をスプーンですくう。

まるで同じパフェを食べているような甘い雰囲気を感じた。
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