→素直
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誰よりも拓海が大好きなんだ。
拓は目を細めた。
「そんなに俺が邪魔なんだ」
「邪魔なんて言ってない」
「だってそうでしょ。俺がいなければ拓海といちゃいちゃ出来たもんね。圭ちゃんが童貞奪われることもなかったし」
「拓、喧嘩売ってんの」
「事実を述べたまでだよ。圭ちゃんは童貞でした」
おちょくられている。
「俺の童貞とかそんなのはどうでもいいんだよ。お前は何をしたがってるの?」
「分かんないの?」
「分かんないよ。俺は拓を好きになることはない。お前にしてあげられることなんかないんだよ」
すると拓は柵から離れて俺の手を握った。
「セフレでいいって言ったよ」
ぎゅっと握られて切望する眼差しを向けられた。
「圭ちゃん、体は正直になっていいんだよ。愛がなくたって俺はそれでいいの」
腹を抱き締められた。
そんな泣きそうな顔しながら言わないでよ。
渋ったが、肩を掴んで引き剥がした。
よろける。
「俺はよくないの!」
拓が拳を握ったのが見えた。
「体じゃなくて拓海が欲しいの!」
「・・・だから俺が拓海なの!」
「頭では拓海が拓であるのは分かってる・・・けどやっぱ違う!お前が拓海だって言うなら俺の気持ち分かるだろ!?」
「分かる!痛いくらいに分かる!」
拓は俺に抱きつこうと腕を伸ばした。
それから逃げようと後ずさったがまんまと捕まえられて体を締められた。
同じように引き剥がそうと肩を掴んだが、震えているのが指先から伝わってきた。
思わず動きを止めて顔を覗き込む。
「俺が・・・っ圭ちゃんの1番になれないのは知ってる。圭ちゃんが受け入れてくれないのも知ってる。だから俺が拓海にならなきゃ受け入れてもらえないじゃん!」
握った拳を胸に叩きつけられた。