←ツンデレ

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母は息を吐いて支度を始めた。

夕飯の準備をしていたから帰りは遅いのかな。

うとうとと目を瞬かせる。
負けないように必死に目を開けようとした。

あれから俺は目を閉じてしまうのが怖くなった。
次の瞬間、目を開けたら知らない世界にいるのかもしれない。

でもどうやら故意に目を閉じるのとは関係ないらしい。

俺の欲求が頂点に達していれば瞬きで人格移動が出来る。

こんなことあっていいのか。

だからなるべく圭助のことは考えないようにしなくてはいけないんだけど―

「拓海」

ハッとなって目を開ける。

すぐに圭助の姿が視界に入ってきた。
自分は寝てしまっていたらしい。

圭助がここにいるってことはまた知らぬ間に?

自分の体をあちこち触ってみる。
異常は見られない。

圭助はさみしそうな笑みを見せた。

「大丈夫。拓海の嫌がることはしないよ」

・・・あ。

「ご、ごめん」

傷つけたかな。

俺の中の1人は圭助が大好きで、よく誘惑されるようだ。

記憶がない内に何度か圭助は体を奪われた。

悔しくて悔しくてたまらなかった。

でも見ず知らずの奴と寝ているよりはまだマシ。

どうやら圭助は母にお呼ばれして家に来たらしい。

「今日は何してたの?」

圭助が横に座った。
重みでソファが傾く。

「昼寝」

そのままに答える。

圭助が笑う。
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