←ツンデレ
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指が口元に触れて拭う仕草をした。
「アイス、口についてたよ」
その指を圭助が舐める。
「あ、ありがとう」
どきどきが止まらない。
だって普通、口についてたからって舐めたりなんかしないでしょ?
圭助はそういう所が普通と違った。
鈍感なのだ。
俺は圭助を盗み見た。
美味しそうにアイスにむしゃぶりついている。
俺のこの感情に名前があるのは知っている。
それはこの世では異常と呼ばれるものであることも知っている。
だから圭助にどれほど胸を焦がしても口にしてはいけないのだった。
無事に卒業式を迎え、俺は中学生になった。
圭助とはクラスが離れてしまった。
圭助が毎日クラスに遊びに来てくれていたが、それは最初だけで1ヶ月もすれば顔すら見なくなった。
クラスが端同士だからというのがあるだろう。
俺も新しいつるみ仲間が出来て流れに任せて学校生活を送っていた。
初めての学祭で俺のクラスはお化け屋敷をすることになった。
視聴覚室から暗幕を借りて教室を真っ暗にする。
壁に人形が飛び出すしかけを用意したり、天井からこんにゃくを垂らしたり子ども騙しみたいなもの。
俺は受け付け担当だったのだが、効果音を流すCDプレイヤーの調子がどうやらおかしいらしい。
友人に頼まれてダンボールの壁の裏で機械を見ていた。
人がいると気付かれないように暗闇で機械を弄る。
すると新しい客が入ってきた。
人の流れを止めるわけにはいかないのだろう。