→鈍感

□←
2ページ/15ページ

「そんなことより勉強しようよ」

不機嫌そうに拓海はプリントのシワを伸ばした。

実咲さんはふふふと笑うと拓海の頭を撫で回した。
まるで犬でも褒めるかのよう。

「そんなに勉強したいならさせてあげる〜!」
「やめてよ」

俺はその光景を眺めつつ鞄からファイルを出した。

・・・そんなことって言われた。

ショックを隠せずに目尻に涙を浮かべる。

どうせ拓海にとっちゃ俺のことなんか興味のない無意味なものなんだ!

そんなに言うなら勉強させてやるよ!

キッと拓海を睨んでからシャーペンを握り、勉強を始めた。



昼時に休憩を挟むことにした。
おばさんが昼食を作ってくれた。

こってりマヨネーズがかかったたこ焼きだった。

かつお節が腰を振りながら「食べて」と誘惑してくる。

「おばさんありがとー!たこ焼き大好きなの」
「実咲ちゃんにはお世話になってるのにこんなものしか出せないで」

実咲さんは手を合わせてからふわふわ生地に箸を刺す。

「圭ちゃんも食べてね」
「いただきまーす」

ずっと下を向いていたら肩が痛くなってしまった。

肩を回すついでにたこ焼きを掴む。

実咲さんが教える勉強は分かりやすいものだった。
流石塾講師。

質問しやすい空気だったし、拓海も分からない問題があったから俺だけじゃないんだって安心出来た。

分かるまで熱心に教えてくれて、しかも楽しそうだったから勉強が好きなんだろうな。

「横井君はたこ焼き好き?」
「はい、好きです。でもお好み焼きの方がタイプですかね」
「タイプって、まるで人みたいに言うのね」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ