→鈍感

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中尾は机から教科書類を勝手に抜くとリュックに詰めていく。

「そのリストバンドの彼女と?」
「彼女じゃないってば」
「まだそんなこと言ってんのかよー。受け取ったからには諦めるんだね」

そういえば俺は拓海に自分の想いを伝えたんだっけ。

ちゃんと聞こえるように2回も。

拓海は考えてくれただろうか。

考えもしないか。

何てったって相手は男だし。

拓海の世界では有り得ないことなんだ。

「中尾・・・泣く・・・」
「えー?急に何さ」

帰る準備を整えてくれた中尾の腕にすがりつく。
中尾は苦い顔をして腕を振り解いた。

「暑いから触るなよー」
「中尾がいつも以上に冷たく感じる。これは心の病のせい?」
「病院行くか」

冷たくあしらわれてしょぼくれた。

これはもう開き直るしかない。

拓海にアタックするまでだ。

拳を握って決意した。

「拓海!」

拓海は外の水道で顔を洗っていた。
体育の後で汗だくだった。

拓海は首にかけてあるタオルで水を拭った。

「一緒に帰ろ!」
「・・・・・・え」

露骨に嫌そうな顔をされる。

負けないぞ。

拓海は迷っていたようだったが同じ方向だし、と一緒に下校することとなった。

何を話そうかと赤信号で停まる度に考える。

「あ、あのさ!今週末空いてる?」

やっと出た言葉がこれだった。
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