→鈍感

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中尾は俺の右手首を指差した。

「それ、誰の?」

俺は手首にはまっているリストバンドを撫でた。

拓海が昨日投げ捨てたものだ。

理由は違うけど拓海がくれたもの。

1度奪われてしまったが拾った俺のものだ。
文句はないだろう。

「自分の?」
「も、貰った」

中尾は目をぱっちり開ける。

「へぇー、圭助にそんなことがね」
「うん」
「受け取ったってことは彼女になったんだよね?」

俺はリストバンドから目を外した。

「彼女・・・?」
「何でキョトン顔してるのさ。だって受け取ったんでしょ?」

受け取ったには受け取ったけど・・・

俺がしかめっ面で考えていると中尾は呆れたような声を上げた。

「意味も分からずに受け取ったのかよー。かわいそうに」
「だって向こうの意味が違ったから・・・」
「圭助が何を言ってるか分からないんだけど」

ゼリーにスプーンを立てた。

「圭助って鈍感だよね」
「そうかなぁ」
「鈍感だよ」

スプーンで俺を指す。

「その鈍感さに甘えちゃいけないよ」



自転車のタイヤがパンクしてしまった。
駅から自転車を押しながら帰った。

夏の空の下を歩いていたら汗だくになってしまった。
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