→鈍感

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中尾は小声で切羽詰まったように言う。

「お母さんに見つかった!?」
「まぁそんなとこ・・・」
「きっつー」

ご愁傷様と中尾は頭を下げた。

「中尾はこれから生徒会?」
「うん。でもすぐ帰るよ」

生徒会なんて中尾らしい。

中尾に別れを告げて校舎を出た。

駐輪場に人が溢れていた。

人混みを掻き分けてまでいかない質なので人がいなくなるのを側の倉庫に寄りかかって待つ。

そういえばこの倉庫、体育倉庫だったな。

壁から背中を離すとYシャツが茶色くなっていた。

砂嵐で壁が汚くなっていたのだろう。

「あぁ!やっちゃったぁ!」

母に怒られる。

すると誰かが優しく背中に触れてきた。

驚いて相手を見る。

中尾だった。

パンパンと払われて笑われた。

「びっくりしたぁ。早かったね」
「お前が帰るの遅いんだよ」
「自転車出せないんだもん」

中尾は俺の髪を掻き回す。

「偉い子ちゃんだねー」
「やめろよ、手に土ついてるだろ」
「あ、忘れてた」

髪の毛を整えて自転車を出しに通路に入った。

駐輪場に残っているのは俺と中尾だけとなっていた。

Yシャツの汚れを気にしていると中尾が再び土を落としてくれた。

ちょっと期待してしまった自分がいた。



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