→鈍感

□←
2ページ/13ページ

拓海も拓海で俺に頼ってくれないし。

「分かった。俺に任せてよ」
「やっぱり圭ちゃんね!頼りにしてる!」

おばさんは自分のカステラも俺にくれた。



「別に俺1人で行ける」

朝起こしに来たら拓海はたいそう不機嫌だった。

何となくもじもじしながら寝相の悪さではだけた寝巻きを直した。

再びベッドに入ろうとする拓海の襟首を掴む。

「やだっ!触んないで!」
「わがまま言うなよ。おばさんからカステラ貰っちゃったんだからさー」
「カステラで動くな!」

拓海は吠える。

「ね、一緒に行こう?1年ぶりの学校だよ?」
「圭助がいなくたって行くってば・・・!」

手を振り解かれて手だけが握った形になった。

むっとなって拳を握る。

「じゃぁ俺行くからね。後で来いよ」

返事も聞かずに部屋を出た。

前よりもずっと拓海の態度が冷たくなった。

苛つくばかりだ。

確かに拓海の記憶がない内に体を重ねたけど・・・したけど!
でもあれも拓海だったし!

だから俺も後悔してない。

だって拓海がしたいって思ったからあいつが出てきたんだ。

俺は自転車を停めた。
手前の駐輪場におさめた。

もしかしてそれが分かっているから俺と関わりたくないのかな。

自分の恥ずかしい気持ちを俺に知られたと思って?

「何だかなぁ・・・」

独り言を呟いてスタンドを立てた。

「何だかなって何だ?」

キュッと音を立ててブレーキを握った中尾が横にいた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ