→鈍感

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俺も親に頼んで塾に行かせてもらおうかな。


ジャリ


同時に靴を砂利に擦る音。

顔を上げると待合室を覗き込む幼い丸顔の少年が立っていた。

少年は俺を見るなり

「あ」

と声を上げる。

「あ・・・久しぶり」

俺は片手を挙げて挨拶をした。

少年はこくりと頷いた。

しばらく沈黙が続く。

「入らないの?」

横にずれた。
隣が空く。

「座りたいなんか頼んでないからな・・・」

そう言って横にちょこんと腰かけた。

寒さで彼の顔は赤くなり、耳までも染めていた。

首が開いたままで寒くないのだろうか。

「拓海」

呼ぶと俺を見た。

拓海は最近呼ばないとこっちを向いてくれない。
目が合わないのだ。

家が近いせいもあって幼馴染みだった俺達は昔は仲良しだった。

小さくて甘えん坊だった拓海はよく俺の弟と間違われていた。

俺のことを「圭ちゃん」と慕ってくれていた。

昔は、と言うのは、今は仲良しとは言えないからだ。

中学に上がってから拓海は急に無口になった。

そんなにぺらぺら話す子ではなかったが、無口になったなって思うくらい声を発することはなくなった。

あの拓海が髪を真っ黄色に染めて登校した時は何が起きたのかと思った。

家が同じ方向なのに会ったことがなかった。
こんな時間に毎日帰っていたのかな。
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