△第三篇
□▲
2ページ/13ページ
絵里子は頭のカチューシャをいじりながら俺の横に並ぶ。
「何々?今日絵里子と帰ってくれるの?」
「だから媚びんなって」
前から頭チョップをされる絵里子。
「だって絵里子、直樹のこと好きだも〜ん!」
絵里子は鼻にかかった声で体を揺らす。
絵里子とは入学式の時に仲良くなった。
入学当初は目立たない、如何にも勉強が出来ますみたいな眼鏡の女の子だった。
そんな彼女が体育館に行くのに1人でうろうろしていたのだ。
心配になって声をかけた。
それから絵里子は俺に懐いて、彼氏が出来たとか別れたとか愚痴を繰り返しながら綺麗な女の子になっていった。
「直樹知ってる?絵里子が毎朝髪を巻いてくる理由」
「知らない。何で?」
「直樹の為に可愛くなろうと頑張ってるからなの!」
絵里子はガッツポーズをして頷く。
「それはありがとう」
話を聞きながら円を捜す。
合い鍵は渡してあるし帰ってしまったのかな。
バイトもしているし忙しいのかも。
「直樹?」
絵里子が腕を引く。
「あぁごめん。円知らない?」
「円って誰?」
「山神」
「あっ!絵里子知ってる。長谷川君と保健室に入ったの見た」
長谷川・・・。
もやが生まれた。
俺は絵里子に笑いかける。
「何かあったの?」
「違うクラスだから分かんない」
どっちかが具合が悪くて付き添いをしたのか。
今日は体育はないし気温の変化で気分が悪くなったのかも。
最近暖かくなってきたから。
「じゃあ俺行くね。ありがとう」
2人にお礼を言って保健室に向かった。