△第三篇

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「直樹が来てくれた!」

円は腕にしがみついて喜ぶ。

「藤森が来たからってはしゃがないの」

野沢は手招きをして円を呼び戻す。

俺が帰ってきてから円の甘え度が増した気がする。

長い間取り残された反動だろうか。

それとも俺が忘れていただけで彼は最初からこんなんだった?

野沢の前に座り直してシャーペンを持つ。

「先生、円は大丈夫ですか?」

円の横に腰かけた。

野沢は唸り声を上げて円の今までの成績表を睨む。

今日は円の成績会議の日であった。
何故俺がここにいるかと言うと、例年円が逃げるからという理由らしい。

野沢も円のプライバシーを考えていない。

成績表を友人に見られてしまうのだ。

まぁ本人がそんなの気にしていないし、悪い成績を恥ずかしいとも思ったことがないのだろう。

1年生の時に丸めた赤点のテストが裏庭に落ちていたことがあった。
どうせ捨てるならゴミ箱にすればよかったのに。

もし円が留年ということになれば同じ学年に所属出来ない。

今まで顔を出していない親も怒って出て来るかもしれない。

野沢は成績を印刷したプリントを円に見せる。

「まぁ今回は頑張ったからね。多分留年は免れると思うよ」

プリントに印刷されている数字を見て驚く。
これはすごい点数かもしれない。

今までの成績が一体何だったのだというくらいに数字が並んでいる。

「藤森何か言ったの?」
「いえ。俺も驚いています」
「うーん、やっぱ勿体無いよねぇ。勉強すれば普通に点数取れるのに」

円は頭を掻いて頷く。
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