■第二篇

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ぼうっとする頭で無駄なことを考える。

宮野は割れた皿を拾い上げてビニール袋に入れた。

またものを壊して。
勿体無い。

それを横目で見てただ点いているだけのテレビ画面を見た。

もう夕方になっていた。
ニュースキャスターが真面目な顔をして年越しの話をしている。

『今年ももうすぐで終わりを迎えますね』
『1年が終わるのは早いですね〜。まだまだやり残したことがありますよ〜』
『そんな山口さんのような方、必見です』

そんな前置きで番組が始まる。

やり残したこと・・・。

休み前のテストは何とか乗り越えられたし、修学旅行も楽しめたし、あとは・・・あとは―。

明るい未来が見えない。

俺を待ってくれる人も、誰かを待つこともなく、俺の人生は終わる。

タオルを取って手首を見る。

ミミズ腫れが残る赤い手首。

俺はこれのように腫物扱いをされてこれから先、生きていくのだろうか。

ソファの上で膝を抱える。

会いたい。

顔が見たい。

あの優しい声で名前を呼んでもらいたい。

あの逞しい胸の中に納まりたい。

あの柔らかな手で触れて欲しい。

彼に別れを告げてからすぐに後悔が始まった。

でもこれでいいんだと思う自分も隅っこにいる。

彼にとって俺は1番じゃない。
困らせてまで無理矢理1番になろうとも思わない。

俺はこの手に何も持っていないから耐えられなかった。

そして本当に何もなくなってしまった。
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