■第二篇

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心臓の辺りがズキズキと傷んだ。

俺はいつも別れを切り出される人間であった。
別れようとも言われずに立ち去られたりもした。

だからそうならないように、円だけは手放したくないと頑張ってきたつもりであった。

だが「つもり」じゃ駄目だったのだ。

彼のヘルプに気付けずにいたのだ。

今更になって後悔をすることが山ほど出てくる。

「・・・分かった」

ケータイを握り締める。

俺は自分から通話を遮断した。

急に体が冷たくなる感覚がした。

ぽかんと口を開けているのは体の中心部分。

ケータイをベッドに置いて立ち尽くす。

「直樹?」

クリスがベッドから起き上がる。

彼にしては随分遅い起床であった。
ゲルはすでに起きているというのに。

「電話だったみたいだけど・・・」

話を聞かれていたらしい。
でもクリスは少ししか日本語が理解出来ない。

俺はベッドに座って指を組んだ。
それを膝に乗せる。

「なぁ、クリスからして俺の英語はどうかな?」
「何だい急に。僕からしたら君の英語は完璧だとは思うけど」
「これならここでやっていけると思う?」
「通じない人間はいないと思うよ」

そっかと呟く。

俺は机に目を向けた。
出しそびれた円へのクリスマスカードが冷たく残っている。

もうすぐ正月だ。

正月を過ぎたら卒業式があって、そこではダンスパーティーが開かれる。

同じ系列の男子校と女子校で合同で行われる予定である。

何を着るのかマリーと話したりもした。

俺には楽しみにしていることがまだ半年分も残っている。

クリスはゲルを家から出して愛撫する。
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