■第二篇

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早く帰ってきてくれないかな。

ううん、早く時間が進めばいいんだ。

リビングを通ると台所から宮野が顔を出した。

「珍しく早起きですね」
「うん、ちょっと」
「お風呂ですか?沸かします?」

着替えを見て宮野が首を傾げる。

朝から風呂なんて贅沢だ。

俺は宮野に甘えてお湯を沸かしてもらった。

肩まで沈んでゆっくり息を吐く。

久しぶりに風呂に入ったかのような気分である。

「宮野」

脱衣場でタオルを手洗いしている宮野に話しかける。

棚拭きをしたタオルみたいだった。
毎日掃除をしているからあまり黒くなっていなかった。

モザイクガラスに宮野の黒い姿がぼんやりと映る。

「宮野は遠距離恋愛したことある?」
「そうですね、似たようなことはありましたよ」

指を組んで水鉄砲を作ってみた。

「・・・最後はどうなったの?」
「どうなったのでしょうね」
「教えてくれないの?」
「私がどうなったかなんて答えにならないのではないですか?」

宮野は俺が何を言いたいのか分かっているみたいであった。

「そうだけど・・・」

お湯の中でぶくぶくと息を吐く。

直樹に訊けばいいの?

いつ帰ってくるの?

俺達大丈夫だよね?

そんなの訊く方が馬鹿みたいだ。
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