■第二篇

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いつも参加していなかった自分には分からない。

楽しそうにしているクラスメイトを見るのも辛かった。
だからずっと机に突っ伏して―

「山神!」

突然呼ばれて体がびくつく。

前の席でたむろしていた男子だった。
確かサッカー部の部長候補、佐伯君。

「は、はい!」

何故だか背筋が伸びる。

佐伯君は色黒で笑うと白い歯がちらりと見える爽やかな人だった。

割と女子に人気があって、勉強はそこそこだがスポーツ推薦でこの学校に入った生徒だ。

「山神は何処のグループに入るとかある?」
「なななないよ!っお、俺を入れてくれる!?」

佐伯君は爽やかスマイルを俺に送ると頷いた。

「先に言われちまったな。いいよ、一緒に楽しもうな」

初めて話した。

こういう話し方をするんだ、佐伯君は。

「あ、あとね長谷川君もいいかな?」
「毅?あぁいいよ。1人足りないし」

俺は野沢と話をしている長谷川君の方を向いた。
旅行の話でもしているのかもしれない。

俺が見ていると向こうが気付いて笑いかけてくれた。

ほんのりと長谷川君の頬が赤くなる。

「どうかしたの?」

野沢と話が終わったらしい。
こっちまで来てくれた。

長谷川君は俺の机に片手を載せる。

「長谷川君のグループ・・・」
「あぁ、僕は足りない所でいいんだ」
「俺、長谷川君と一緒がいいな」
「僕?」

長谷川君は側にしゃがむ佐伯君達を見た。

意外、という顔をして再び俺を見る。

そして嬉しそうに目を細めて笑ってくれた。

「よろこんで」

長谷川君が嬉しそうな顔をすると胸の辺りが温かくなる。

今なら分かるかもしれない。

修学旅行を楽しみにしているみんなの気持ち。
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