■第二篇

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恭平から電話があったのに無視をしたままであった。

後でかけ直さなければ。

「まだ俺はここにいるよ」
「本当?」
「ウィリアム家が出てけって言うなら別だけどね」

クリスはくすりと笑う。

「みんな君のことが好きなんだよ。もう家族同然の扱いなんだから」
「ベンジャミンも?」
「当たり前じゃないか。もちろん僕も、ね」

クリスはスポンジを水ですすいでから絞った。
ふんわりとスポンジが広がる。

部屋を雑巾で拭く工程に入った。

昨日伯父さんに手紙を出した。
伯父さんのことだから返事を書こうと頑張ってくれるかもしれないが、筆記体は読めないかもしれない。

はっきりとしたローマ字を書くべきだったか。

「あー!いたいた!」

珍しく日本語が聞こえてくる。

観光客でも来たのかな。
でもここら辺は田舎くさくて特に観光するような場所は―。

「直ちゃん!」

勢いよく顔を上げる。

道路のど真ん中に色素の薄い頭の男が立って俺を指差していた。

その綺麗な日本語に驚いたのはクリスも同じであった。

呆けている俺に手を振る。

「直ちゃん?大丈夫?」

驚かないわけがない。

今ここにいるはずのない恭平が俺の目の前に立っているのだから。

「・・・恭平・・・恭平じゃないか!」
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