■第二篇

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「ちょっと出かけてきていいですか?」

マリーは壁掛け時計に目をやる。
針は7時を指していた。



夜の街は光で溢れていた。

日本と変わらない。

路地裏でいちゃつくカップルがたまに目に入る。
外人が人前でそんなことをしていても不快な感じがしないのが不思議だ。

クリスに道を教えてもらったから、目的のものが置いてある店にすぐに辿り着けた。

クリスが美味しいと紹介してくれたチョコレート屋だ。

ドアを開けるとカウベルが涼しい音を奏でる。

カウンターに白髪ひげを生やした優しそうなお爺さんが座っている。

「そんな感じ」だ。

指を迷わせながらチョコを捜す。

ぴんときたものを手に取る。

円はいちごが好きっぽいから丁度いいと思う。
俺はまだ食べていないけど。

茶色い箱に6個だけいちご形のチョコが入っている。
グロい顔のいちごが印刷されているわけじゃないし、これが1番いいかもしれない。

円が喜ぶ顔を思い浮かべて思わず笑みがこぼれる。

レジまで持って行くとお爺さんは微笑んだ。

「プレゼント?」
「あ、はい」

何で分かったんだ。

お爺さんは慣れた手つきで箱を綺麗な包装紙で包んでいく。

レジの側に小さな棚が置いてあった。
ポストカードが積んである。

その1枚を取って渡す。

「これも」
「観光?」
「留学です」
「勉強熱心だねぇ。偉い、偉い」
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