■第二篇

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・・・早く帰って来ないかな。

補習期間が終わって長谷川君とも会えないし、家には厄介なのが2人いる。

常に宮野は仕事をしていて忙しそう。
家事をしながら俺の話は聞いてくれるけど何だかな。

クローゼットの中に引き出しが置いてあった。
腰の高さくらいで木製だ。

おもむろに1段目を引く。

ポロシャツばかりが並んでいる。
上を見るとYシャツばかりがかかっている。

そういえば直樹はずっと難い服ばかり着ている。

直樹のラフな姿を見るのは体育の半袖の時だけかな。
あと学校祭のクラスTシャツ。

それのせいか、恐ろしいくらいに学校の制服が似合っている。
薄い水色のシャツも、白いシャツも。

駄目だ、と引き出しを押す。

で、でも・・・ちょっとくらい、いいんじゃないかな?

ちょっと、ちょっとだけだよ。

1枚を取り出して顔を埋めた。

何だか変態みたい。

着ていないものだから体臭は欠けてしまっているけど、少しだけ直樹のにおいがした。

「円さん・・・」

突然憐みの声が聞こえてそっちを振り返る。

ドアの前で宮野が雑巾を握って立っていた。

俺は慌てて棚を拭く。

「なななな何!?」

宮野はじっと俺の手元を見る。

「それ、雑巾じゃありません。直樹さんの服です」
「はぁっ!!」



掃除を終えると台所を借りてお茶を飲むことにした。

このことを想定してなのか、何故か宮野は紅茶セットを鞄に忍ばせていた。

家で飲むのと同じ茶葉をポットに入れる。
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