■第二篇
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宮野はいつも俺がいない間に掃除を済ませてしまう。
だから掃除機の使い方も、洗濯機の使い方も知らない。
見たことがないのだから。
もし目の前でやっていたとしても見ていないんだろうけど・・・。
でもシーツはきちんと洗濯が出来た。
宮野に洗濯機の使い方を教えてもらって、1人で出来た。
宮野のロボットのような動きで部屋は見る見る内に綺麗になっていく。
俺はシロを抱えたままそれをぼーっと見る。
どうして自分は何も出来ないのだろう。
直樹の役に立ちたいとは思っているんだけど。
気持ちだけじゃ何もならないのは分かっている。
だから今日、1人で掃除をしようと決めていた。
なのに・・・。
宮野は額の汗を拭うとさっぱりした顔で微笑む。
「円さん、手伝ってもらえますか?」
「・・・う、うん!」
俺は宮野のこういう所が好きだ。
バケツに水を汲んで来るように頼まれてその通りに動いた。
宮野は雑巾を俺に渡す。
物理室での掃除を思い出した。
「では、棚拭きをいたしましょう」
「それなら出来るよ」
「私はあちらの部屋を、円さんはそちらの部屋をお願いします」
「了解!」
俺は濡らした雑巾と乾いたタオルを持って寝室のドアを開けた。
ベッド以外何も置いていない部屋。
ここは拭く場所がない。
一応クローゼットを開けてみた。
懐かしい香りが鼻を通る。