■第二篇

□■
3ページ/6ページ

店の大きさ関係なしに案内してくれた。

信号機がいくつあるだとか、豆知識のようなものも。

彼には人を引き付ける魅力的な所がある。
人を楽しませてくれる要素を兼ね備えている。

通りかかった人に挨拶をされることが何回もあった。

みんな彼のことを知っている。
彼もまたみんなのことを知っていた。

1日中街を散策して疲れてしまった。
夕方を過ぎようとしている。

人が少ない噴水のある公園のベンチで休憩をすることにした。

クリスは着色料多めの赤いアイスクリームをおごってくれた。

舌が真っ赤になりそう。

「クリスは友達がたくさんいるんだね」
「そんなことないよ」

クリスは首を振る。

謙遜なのか。

「僕にはみんな同じに見えるよ。みんな同じ形をした生き物にしか捉えられない」
「じゃぁ俺もそんな感じか」
「ちょっと違うかな」

クリスは再び首を振る。

「何だか君は違う。一緒にいても落ち着ける」
「・・・落ち着ける人がいなかったの?」
「それもよく分からない」

ゲルが肩から下りて太ももに座る。
アイスをねだるように舌を垂らした。

「この世界は僕とゲルだけで構成されているから、周りの人達はみんなモブなんだ」
「モブ?」
「僕には彼だけでいい。親もクラスメイトもいらないんだ」

組んだ手をぎゅっと握る。

2人だけで構成された世界、か。

周りの人間をモブと呼ぶことが彼の拒絶の意思であった。

クリスが家族に見せる笑みは顔面に厚く塗られた壁だ。

でもそんなの、生まれてからずっとなわけない。

何かのきっかけがあって彼をそう思わせたのだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ