■第二篇
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「明日から夏休みだけど、2年生は1番ハメを外すから気を付けるように。来年に向けての勉強をするのもいいと思います」
一斉に文句を垂れる。
「高校2年生最後の夏休みでーす!」
当たり前のことを大きな声で主張するお調子者。
「隣のクラスの藤森君を見習いなさいな」
「え?直樹が何してるって?」
女子達が声を上げる。
俺はむっとなってそっちの方を向いた。
「今彼はアメリカに留学中です」
野沢は何故か自慢気に言う。
「えー!?アメリカ!?」
「ありえねぇー!外国マジ怖い!」
「でもこの学校、毎年留学する人いる学校だよ」
「藤森君らしいよね。ずっと勉強してたし」
「アメリカって銃の国でしょ?大丈夫なの?」
銃・・・。
3日前まで何とも思っていなかったけど急に不安になってきた。
もし直樹が何かの事件に巻き込まれて死んでしまったらどうそのことを知ればいいのだろう。
アメリカの日本大使館?
「藤森君なら弾丸避けそう」
「あんた直樹を何だと思って見てんのよ」
野沢は教卓を叩く。
「とにかく、この学校の大半が4年大志望してるんだから勉強するように」
はーい、と返事をする素直な生徒達。
進路かぁ・・・。
俺は誰にも気付かれないように溜息を吐く。
進む直樹と止まったままの自分。
俺は小学校の時から全然進歩がない。
「山神」
上半身を起こす。
「お前、補習ね」