■第二篇

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玄関ドアに取り付けてある鈴が鳴ると階段から人が下りてきた。

こっちは細身で黒髪の青年であった。
へらりと俺に笑いかける。

青年は居間に入って行く。

マリーに押されながら居間に入ると、彼女と同じくふくよかな体の男性がソファに座っていた。

彼の膝の上に犬が飛び上がる。

丸眼鏡の奥の大きな瞳が細まった。

「おぉ〜!来たか!」

伯父さんを思い出す。
声が低くて笑顔が素敵な人だ。

ここに来てすぐに日本が懐かしくなった。

マリーは俺をソファに座らせる。
荷物を何処かに持っていかれて手が落ち着かなかった。

拳を握って膝に乗せてみる。

その横に先ほどの青年が腰を下ろした。

「ケリーだよ。よろしくね。こっちはベンジャミン、俺の可愛い弟さ」

ケリーは笑顔をキープしたまま犬の紹介もしてくれた。

ベンジャミンの顔を掴んで上下に撫で回す。
迷惑そうに鼻を鳴らしていた。

紅茶の香りが鼻をかすめ、居間の後ろにある台所に目をやる。

背中を向けていたマリーが銀のトレーを持って振り返った。

上にはティーカップ5人分とクッキーが箱ごと載っていた。

マリーがソファに座ると男性が口を開く。

「ようこそウィリアム家へ。私はジョン。この家の父親だよ」

ジョンは俺に握手を求めてきた。

「よろしくお願いします」

快く握手をする。
大きな手は俺の手をすっぽりと隠してしまった。

「ジョンの妻のマリーよ。庭仕事が大好きなの。今度一緒にやりましょうね?」

マリーとも握手をする。

ケリーは自己紹介を終えていたのでベンジャミンと遊んでいた。
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