○第一篇

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6月がやって来た。

早くも半袖に衣替えをしている生徒がいる。
その1人が円である。

夏になると妙にテンションが上がる彼。

彼曰く

「夏って言ったらパラダイスなんだよ!お祭だってあるし、虫捕りだって出来るし、プールに入れるんだよ!去年はカブトムシが地上に出てきたのを偶然目にして感動したんだからね!」

だ、そうだ。

何処までいっても阿呆っぽい話しかしない。
そこがまた円らしいと言えばそうなのだが。

逆に円が物理の話をしていたら気持ちが悪い。

「H2Oって何?」
「・・・・・・水」
「ふーん」

円は水の入ったペットボトルを傾けて口をつける。

「あつーい」

と言いながら円は俺の背中に寄りかかった。

「暑いならくっつかなきゃいいのに」

屋上にて夏休みの計画を立てている途中だ。

そろそろ留学の準備をしておきたい。
伯父さんも賛成してくれているし、急ぐことはないのだが。

「こういう時じゃなきゃくっつけないでしょ」
「こういう時って?」

俺の中では円はいつもくっついているような気がするのだが。

円は全体重を俺の背中に預けてのけぞる。
膝にのせたノートに額がつきそうになるまで体が曲がった。

「誰もいない時」
「誰かいたって別にいいじゃないか」
「そんなこと出来るわけないじゃん・・・」
「俺は別に構わないけど」

円は溜息を吐く。

「直樹ってどうしていつもそう自信に溢れてるの?」
「自信に溢れてるわけじゃないけど、円となら恥ずかしくないからだよ」
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