○第一篇
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「はい、大丈夫です・・・・・・・・・はい、・・・ありがとうございました―じゃぁまた」
俺は受話器を置いた。
月1回来る伯父さんからの電話。
たまに伯母さんから来たりもする。
ダンボールに食料を詰めて送ってくれた伯母さんに感謝の電話を俺からしたのは何度目かのことだった。
子どもがいない伯父さん夫婦にとって俺は息子のようなのだろうか。
ダンボールが届いたのは昨日の夜のこと。
お菓子の他に漬物が大量に入っていた。
伯母さんは漬物が好きみたいだ。
果たして1人で消費出来るだろうか。
俺はちらりとテーブルの方を見る。
テーブルの上に居座って日向ぼっこをしているのは藤森家の猫、シロだ。
田舎から出てきてすぐのことだ。
近くの公園の野良に餌をやっている内に家までついてきてしまったのだ。
スネに頬をなすりつけてくるものだから、まだ寒い季節だったので家で飼うことにした。
体が真っ白だからシロだ。
野良猫出身にしてはいい毛並みだと思う。
・・・猫は漬物を食べるだろうか。
俺は適当に袋を破いてきゅうりを1枚差し出してみた。
シロは横目でそれを見て伸びをする。
興味がないらしい。
俺は仕方なく容器にきゅうりを突っ込んで冷蔵庫に保管した。
男子高校生が毎日漬物っていうのも何だかさみしい。
自分のペースで食べていけるのであればなんら問題はないのだが、賞味期限が全て一緒だったのだ。
これなら伯父さんの家で食べてもらった方がよかったのに。