─接触2

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潤と返された宿題を持って職員室に行くと担任は嬉しそうな顔をしていた。

昨日までマスクをしていたが風邪はすっかり治ったみたいだ。

「八木君も珍しい所に来たねぇ。勉強かい?私は嬉しいよ」
「勉強してないわけじゃないっすよ」
「それは成績を見てたら分かるさぁ」

穏やか人なのが話し方で分かる。
いくら俺が生意気な態度を取っても気にしたことがないようだった。

「八木君はやる気がないからなぁ」
「勉強面倒だし」
「まぁ八雲君みたくやる気だけの子もいるからねぇ」

俺は泣き顔の八雲を思い浮かべてふき出した。

毎回補習組の彼。
60点以上の答案用紙は見たことがない。

意気込みは俺よりもある。

テストが近くなってくると急に勉強の話をする奴だ。
当然勉強しているのかと思う。

だがそんなものはしていない。

やる気だけはあるのだがどうも机に向かえないらしい。

「どれ、何処が納得いかないんだね」

担任は潤のノートを覗き込む。

毎日潤は放課後に図書室に残るようになった。

毎日違う教科に手をつけてまんべんなく理解しようという作戦だ。

何も言わないが多分俺の為だと思う。
俺も何かしなくてはと一緒になって勉強を始めた。

潤は教師達から得た知識を教えてくれた。
自分で言うのも何だが、呑み込みは早い方なので教えられればすぐに解けた。

教科書のページ数が増えていく達成感。

郁美の存在を忘れて没頭した。

「閉館です」

昨日と同じ委員が声をかけてきた。

「片付けたら出ます」

潤が返事をすると女の委員は目を泳がせてカウンターに戻っていく。

「モテて大変だな」
「褒めてくれてる?」
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