─接触1
□─
1ページ/9ページ
グラウンドを走る小さな人。
虫みたい。
俺は外から目線を外して教壇の上で担任と話す潤に目をやった。
彼を見ている目は俺だけではない。
そこらの女も、八雲も。
そっと息を吐いて再び窓の外を見た。
明日から夏休み。
宿題を大量に出されてまだ始まってもいないのに嫌な感じ。
「お待たせ」
潤がプリントの束を抱えて戻ってきた。
元はと言えば窓際の彼の席を譲る。
「じじぃなんだって?」
「数式が違ってたみたい。また最初からやり直しだよ」
潤は担任に自主的に添削をしてもらっている。
将来が心配だとかで今から頑張るんだと。
専務である親のように有望だ。
「早く行かねぇと前側取れなくなっちまうだろ」
「ごめん、今しまうから」
潤は慌ててプリントをファイルに突っ込んだ。
今日はにじうさの地下ライブの日。
何日も前から行く約束をしていて、念願のライブ当日。
ライブハウスで行われる小規模ライブの為、早く行かなければ後ろ側で見ることになってしまう。
学校から真っ直ぐライブハウスに向かった。
すっかり慣れてしまった首輪をしてキーさんを迎える。
足取りは軽やかで階段の最後の段はジャンプをして着地した。
それを見て潤が笑う。
「本当に好きなんだね、レインボーラビット」
「にじうさの為なら命かけてもいいね」
あんなにいい曲を作るのに一般人にはウケない。