─接触1
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「おい、止まれ」
足音を立てながら後ろをついていく。
「止まれ」
襟首を引っ張って強制的に歩みを止まらせた。
潤は「ん?」と首を傾げて振り返る。
その顔の清々しいこと。
「何?」
「何じゃねぇよ。何で俺がデートについてかなきゃなんねぇんだよ」
「だから昨日から言ってるじゃん。朔馬が俺の犬だからだって」
だから何故犬だからってデートにまでついて行かなくてはならないのか。
「大丈夫だよ。優菜ちゃんには言ってないから」
もう名前で呼んでるし。
潤が後輩にデートの申し込みをされたのは昨日のこと。
すぐにOKを出してアドレスまで交換して。
何だか取り残されたような気分になっているのは気のせいだろうか。
きっと見たこともない光景を見たからだ。
あの潤が女と手を取り合うなんて。
「いや、言わなきゃまずいだろ」
「言う必要ないじゃない。朔馬は隠れてついて来るんだから」
耳を疑った。
思わず口をぽかんと開けたまま首を前に出す。
「はい?」
「犬なら犬らしく飼い主追いかけてきなよ」
形式的に尾行すれと言うことか。
潤の発言には参る。
「お前頭どうかしちゃってるぞ・・・」
「そんなの百も承知でしょ?」