→素直
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目を開けるとドアが視界に入ってきた。
目を動かして壁かけ時計を見る。
ぼやけてよく分からない。
体を回転させると目の前に拓海の寝顔があった。
顔の角度を下にして安らかな寝息を立てている。
愛しい人の寝顔を見て笑みが零れる。
頬に触れて、髪をすいた。
「拓海」
薄く目を開ける。
ゆっくりと目だけを動かして俺を見た。
「け、すけ・・・」
掠れた声で俺を呼ぶ。
「まだ眠い?」
「起こして・・・俺を起こして・・・」
拓海の腕を掴んで上体を起き上がらせた。
力が入らないのか座っていられずに体が倒れる。
俺は彼を横から抱き締めてもたれさせた。
拓海はぼんやりしたまま口を動かす。
「圭助行かないで・・・」
「何処にも行かないよ。拓海の側にいるよ」
「好き・・・」
「うん」
軽く唇に触れてキスをした。
再び俺達はベッドに横になった。
行かないで、と何度も呟きながら拓海は俺の腹を力無く抱き締めた。
目を覚ます。
すぐに現実を知る。
横を見ると拓がベッドに座って窓の外を見ていた。
俺が起きたのに気付いて笑顔を向けてくる。