→素直
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校庭の桜が満開になった。
各々がケータイを高く上げて写真を撮っていた。
新入生には珍しい光景のはずだ。
校庭に桜の木がある学校はそうそうない。
やはり毎年見てはいるが鮮やかな桜色には見惚れる。
中尾は写真を撮りながらふとこんなことを言った。
「恋愛したいな」
「・・・え?」
突然のことに反応が遅れる。
中尾はケータイを下ろして俺を見た。
「圭助、俺と付き合うか」
「何言ってんの」
「半分冗談、半分本気だ」
わけの分からないことを。
「割とどっちでも大丈夫かも」
「俺は中尾と付き合わないよ」
「だよな」
真面目な顔で返される。
「まだ待つの?」
ケータイをポケットにしまう。
「大体あの約束は曖昧だろ?期限なんかないし、医者のどんな判断で出てくるかも分からないし」
「うん・・・」
「あいつのふりが利かなければ、もしかしたらずっと檻の中かもしれない。それでもまだ待ち続けるの?」
中尾はいつも正しいことを言う。
それは3年生になっても変わらない魅力的な所である。
彼からしたら俺は無駄な行動が多い人間だ。
「お前後輩に告白されたじゃないか。ボランティアか何かで関わったんだっけ?あいつじゃなくたってお前を選ぶ人間はいるんだよ?」
そんなこと言われても。
中尾は黙る俺に息を吐いた。