→素直

□⇔
1ページ/15ページ

校庭の桜が満開になった。
各々がケータイを高く上げて写真を撮っていた。

新入生には珍しい光景のはずだ。

校庭に桜の木がある学校はそうそうない。

やはり毎年見てはいるが鮮やかな桜色には見惚れる。

中尾は写真を撮りながらふとこんなことを言った。

「恋愛したいな」
「・・・え?」

突然のことに反応が遅れる。

中尾はケータイを下ろして俺を見た。

「圭助、俺と付き合うか」
「何言ってんの」
「半分冗談、半分本気だ」

わけの分からないことを。

「割とどっちでも大丈夫かも」
「俺は中尾と付き合わないよ」
「だよな」

真面目な顔で返される。

「まだ待つの?」

ケータイをポケットにしまう。

「大体あの約束は曖昧だろ?期限なんかないし、医者のどんな判断で出てくるかも分からないし」
「うん・・・」
「あいつのふりが利かなければ、もしかしたらずっと檻の中かもしれない。それでもまだ待ち続けるの?」

中尾はいつも正しいことを言う。

それは3年生になっても変わらない魅力的な所である。

彼からしたら俺は無駄な行動が多い人間だ。

「お前後輩に告白されたじゃないか。ボランティアか何かで関わったんだっけ?あいつじゃなくたってお前を選ぶ人間はいるんだよ?」

そんなこと言われても。

中尾は黙る俺に息を吐いた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ