→素直

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「中尾、相談したいことがあるんだ」

真剣な面持ちに中尾は眉根を寄せた。

こんなに真面目に人にお願いしたのは初めてかもしれない。

中尾は放課後に教室に残ってくれた。
俺はてっきり彼はまだ塾に通い詰めているものだと思っていた。

高校に入学してからは自学らしい。

長期休みの講習は単なる力試しのようなものでだった。

「俺的にはまだ塾に通っていたかったんだけど、母さんが駄目だって。塾代急に高くなるしねー」

中尾は肩をすくめて紙バックに挿したストローをくわえた。

「そんで圭助の悩みは何?レポートの助け?」
「そんなんじゃないんだ」

レポートよりも悩ましい悩み。
生き物との関わりが1番難しい。
特に人間は。

もう俺だけでは限界だ。
このままだと拓海の思い出だけに浸って鬱になるかも。

・・・ちょっと大袈裟だった。

俺達はいつもの席の並びに座った。

俺の前に中尾。

1度席替えをしてから変わらない席順。

お昼の時間はいつも彼の高い鼻を見ていた。

「中尾ってモテそうだよね」

初っ端から話が逸れる。

中尾は苦笑しながら椅子に足を立てた。

「えぇ?」
「だって頭いいし、鼻高くて顔整ってるし、愛想もあるし優しいし」
「そんなに俺がよく見えるの?圭助ってそんなに俺のこと好きなんだね」
「まぁ好きだけど・・・」

男相手に好き好きあまり言いたくないんだけど。
何だか気恥ずかしい。

拓海にはぽんぽん言えるんだけどな。

想いが溢れておさまりきらないからだな、きっと。
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