→素直

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エナメルの鞄に衣類を詰めて財布をポケットに突っ込んだ。

支度を整えると階段を下りる。

母はまだ寝ていた。
父は既に仕事に出ており、さっき見送ったとこだった。

いつもより遅い朝ご飯を摂ってテレビを点ける。

『今日の天気は晴れ。雲1つない青空が見られるでしょう』

お天気お姉さんがにこりと俺に笑いかける。

海に行くのには最高の天気だ。

テレビを消して家を出た。

中尾との待ち合わせは学校前。
中尾は俺よりも先に着いていた。

学校近くのバス停から海に向かう。
乗り継ぎを繰り返して向かうのだ。

「海楽しみだなー」

歩きながら中尾は嬉しそうに俺の肩を叩いた。

「久しぶりだ」
「そんな圭助にスペシャルゲストを呼びました」
「は?」
「じゃんっ!」

中尾はバス停に手を向ける。

誰かが立っていた。
向かえの歩道からでははっきりと顔が見えない。

「じゃんって・・・」

でも俺には誰なのかは分かった。

あの派手な頭に黒いタンクトップから伸びる華奢な腕。

相手は俺達の姿を見つけると手を振った。

「圭ちゃん!」

愕然とした。

拓だ。

何故と目を点にして彼を見る。

中尾は硬直して動かない俺の腕を引っ張って斜め横断をした。

何故と疑問を繰り返し呟いて彼の前に立たされた。
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