→素直

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「待って拓」

拓は俺の腕を振り解いてにこやかに笑う。

「拓じゃないよ。拓海だよ」
「お前は拓だろ!もういいって何だよ!」

拓はズボンのポケットから手を抜いた。

学校からの帰り道。
拓海が戻ってくるはずなのに拓がそこにいた。

俺は拓を問い詰めた。

そしたら「もういいよ」の1言で返されたのだった。

わけが分からない。

彼が何を考えているのか伺う。

拓は俺のあごを掴んだ。

「もういいよ。ルールなんかいらない」

2人で作ったルール。

拓はかかとを浮かせて唇を重ねてきた。

「何・・・」
「俺が勝ったんだ」
「勝った・・・?」

うんと頷いた。

拓は家の柵に寄りかかった。

「この体は俺のものになったの。もう拓海が出てこれないようにしたんだ」

そんなこと―

でも拓は前に本気を出せばそんなこと簡単だと言っていた。

脅しの言葉だと思っていたのに。

「拓海の圭ちゃんを想う気持ちが俺に負けたんだよ」

胸に手を当てた。

「俺は圭ちゃんの為になら死ねる。何だってしてあげる」
「拓―」
「拓海だよ」

拓のことは嫌いではない。
わがままな友達を持っているかのようだ。

でも

「拓・・・何だってしてくれるなら拓海を返して」
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