←ツンデレ

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「拓海、どっちがいいの?」

決して急かしているわけじゃない。

俺は差し出された2つのカップアイスを交互に見ながら指をくわえる。

「うんと・・・」
「うぇ、手冷たいぃ」
「え・・・圭ちゃんはどっちが好き?」

圭助は目を泳がせてにこりとする。

「チョコ味!」

圭助はチョコ味が好きなんだ・・・。

「お、俺もそっちがいい」

圭助が好きな味。

圭助は一瞬きょとんとしたがすぐに満面の笑みを見せてくれた。

「半分こしよ!」
「・・・うん!」



幼馴染みの圭助について知っていることは優しくて面倒見がよくて、俺の側にいてくれないと困る人。

俺が圭助の弟に間違われようがよかった。

ただ好きで好きで、彼が左横にいることで胸が苦しくなることがあった。

「宿題終わらせた?」

圭助が顔を覗き込んできた。

俺は口にくわえたアイスキャンディを抜いてふるふると首を振る。

「まだだよ」
「俺も一緒!だって中学受験なんかしないもんね」

圭助はへへへと笑うと箱から新しいアイスを引き抜いた。

チョコ味。

今年小学校を卒業する俺達は新しい道への不安と、大人に近付く興奮に満ちていた。

圭助は相変わらずの平凡ぶりで本当にこれが中学生になるのかというほど緊張感を感じない。

「あ」

急に声を上げる。
隣を見ると圭助が俺の顔に向かって手を伸ばしていた。

びっくりして首を引っ込める。
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