→鈍感

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部屋の掃除を自分からするなんて珍しい。

朝起きて母が最初に口にした言葉だった。

いつも言われてから掃除をする。

昔から誰かにやってもらったことはなかった。

前にも言ったように母は家事が大嫌いだからだ。

自分で出来ることはするようにと言われて育ってきた。

「完璧。俺偉い」

独り言を呟いて掃除機のコンセントを引き抜いた。

そこに廊下を通りかかった母が開きっぱなしのドアから顔を出した。

「すごいきれーい。パパに似たんだね」
「確かに母さんの血ではないかも」

ついでに窓までも拭くという始末だ。

「そんな圭にお昼用意したよ。拓海君来る前に食べちゃいなさい」
「はーい」

休日に昼食を作るなんて母にも珍しいことがあるもんだ。

今日は拓海が来る。
ちゃんと遊びに来るのは1年ぶりくらい。

張り切って片付けをしていたが俺は引き出しから大変なものを見つけてしまった。

そこには小学校に集めていたカードやら何かのゲームのサイコロやらがらくたが封印されてあって、多分見つけた“それ”も封印したかったのだろう。

母に見つかる前に何処かにやらなくては。

俺はスケルトンピンクのボトルを引き出しから取って、取り敢えずベッドの下に滑り込ませておいた。

拓海が帰ったら処分する雑紙と一緒に置いておけば忘れないだろう。



1時少し過ぎに拓海が来た。
個装のチョコレートをお土産に。

同タイミングに母が買い物に出かけた。

思う存分遊べとのことだった。
多分帰りは横の家だろう。
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