→鈍感

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性別の壁というものは分厚くてそう簡単に壊すことは出来ない。

お好み焼きをひっくり返しながら息を吐く。

「焦がすなよー?」

心配そうに言いながら近付いてきたのは中尾だった。

「あぁ中尾か」
「俺じゃ不満か」

苦笑をこぼす。

「生徒会は?」
「今昼休み。折角だからクラスの様子見に来たんだ」
「大変だね」

ソースの焦げるにおいに中尾はよだれを垂らした。

そっと小銭を差し出す。

「まいど」

学校は人で溢れていた。
去年よりも人が多いかも。

これだけ人がいたらそんなの分かんないか。

屋外の作業を終えて汗だくになってしまった。

体育館横の水道で顔を洗った。
首にかけてあったタオルで水滴を拭う。

「あら?」

タオルを顔から離すと目の前に実咲さんが立っていた。
淡いピンクのロングスカートが風になびいている。

学校に来ていたなんて。

「拓海のお友達!」

爽やかに微笑を浮かべて近付いてきた。

彼女の横にいるだけで涼しくなれるような気さえした。

「えっと」
「横井圭助です」
「横井君ね。拓海知らない?」
「拓海?教室にいませんでしたか?」

今の時間は教室で仕事をしているはずだ。
だから2日目は一緒に回れなかった。

「ううん、学校案内してもらってたの」

え?

聞き間違いだろうか。

だって拓海は今時間抜け出せなくて―
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