→鈍感

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母が道端で配っていたプレゼントを持って帰ってきたのは学祭前日であった。

「夏期講習?」

俺はそれを眺めてジュースを飲む。
通学路で汗だくになってしまった熱い体に冷たい飲み物は神様のようなもの。

横で拓海はプリントを覗き込む。

最近拓海は素直だ。

好きだとか、何がしたいだとか甘い恋人の囁きはないが俺の誘いは断らない。

今日は学祭の予定を立てるのに家に行くことになった。

梅田家でもよかったのだが、拓海の希望で俺の家へ。
拓防止対策らしい。

万が一拓が出てきたとしても親がいる前ではおかしなことは出来ないだろう。

母は当たり前のように俺達の会話に混ざってきたのだった。

「拓海君も受けない?夏期講習」

それは近所の進学塾の夏期講習案内であった。

塾からしたら安い値段らしいのだが俺からしたらこんなに金を取る必要はあるのだろうかと首を傾げる。

拓海は小さく首を振った。

「俺はちょっと・・・」
「あらそう?梅田ちゃんは大賛成だったんだけどなぁ」

既におばさんには話したらしい。
というか一緒にいたのか。

「遊ぶのもいいけどさ、勉強だっていいと思うの」
「だって母さんだって遊んでたんでしょ?」
「お母さんとあんたは頭ん中が違うの」

でも毎回のテストで中尾に頼り過ぎなのは気付いていた。

ドーナツを条件に引き受けてくれていたけど彼だって自分の勉強で忙しいはずだ。

「通えって言ってるわけじゃないんだよ。たまには勉強する夏休みもいいかなって思っただけ」

母はプリントを畳んでテーブルに置いた。

「・・・行こうかなぁ」

瞬時に母が明るい表情の顔を上げる。

「さっすが圭助!」

俺は拓海を横目で見た。
顔を引き吊らせる。
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