→鈍感

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球技大会が近付いてくると生徒達は落ち着きがなくなる。

球技大会の2日間は授業がないからだ。

試験も終わり、後は夏休みまで遊び呆けることが今の目標。
夏休みが終われば学祭が待っている。

確かに2年生は気が抜ける。

昼休み、放課後を利用して競技の練習をしたり、優勝を狙うクラスが多い。

その理由は―

「焼き肉かー」

中尾はしみじみと言いながらバスケットボールを磨いていた。

球技大会に使うボールを生徒会の中尾が掃除している。
本当は彼の仕事じゃないのだが。

中尾は世話焼きだから引き受けてしまったのだ。

その仕事に家庭教師を頼んだお礼に俺が付き合っている。
この後はドーナツが中尾を待っている。

「この学校も金が動くね。クラス全員と焼き肉だなんて」

そう。
優勝クラスには焼き肉招待券が待っているのだ。

それと生徒全員に学校からリストバンドがプレゼントされる。

学校側は球技大会だけでかなり費用を使っている。

やる気が出た生徒達の熱気は夏に負けないくらい熱い。

「でもそんなに焼き肉には興味ないな、俺」
「じゃぁ何がよかったんだ?ドーナツか」
「中尾じゃないんだから」

ボールをかごに投げる。

5個目の掃除完了。

「ケーキとか」
「へぇ、甘党なんだ」
「甘党ってほどじゃないけど焼き肉よりケーキかな」
「デザートじゃん。腹が膨れないよ」
「割とケーキも胃にくるよ」

中尾は笑いながら次々とボールをかごに投げていく。
仕事が早い。

「でも俺達のクラスはやる気ないよなぁ。残念だ、焼き肉」
「文系クラスだから仕方ないよ」

北は文系と理系に分かれることになっている。

俺と中尾がいるのが文系クラスだ。
拓海はおばさんの話によると理系らしい。
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