→鈍感

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拓海が戻ってきた。

それがまたおかしな体質になって。

拓海の母親は世界一周旅行に行っていたと俺の母とお茶を飲みながら話していた。

本当のことを知っているのは俺だけ。
もちろん裏拓海から聞いた話だからおばさんは知らないで俺にも嘘を吐いている。

おばさんは嘘が上手だった。

その目には疲労感が残るクマが。

息子の方は不安がっていた。

気付けば1年経っているし、背も伸びて、母親は今でも拓海が“普通の体”に戻ったと思っている。

相談する相手もいずに独りで抱え込んでいた。

頼ってくれればいいのだが、俺と知らぬ間に体の関係を持ってから避けられるようになっていた。

「入学試験を受けてたの?」

俺は学校から帰ってから遊びに来ていた拓海の母親に誘われて一緒にお茶を飲むことになった。

おばさんは頷いた。

「そうなのよ。ちゃんと入学試験は受けてたの」
「え、結果は・・・」
「それが合格してたんだから!」

おばさんは笑いながら手を振る。

ということは裏拓海が入試を受けたのかな。
やるじゃないか。

「じゃぁ拓海は北の生徒ってことなの?」
「一応ね。そこで圭ちゃんにお願いがあるのよー」

俺はお土産の包み菓子を剥いた。

シロップ漬けの分厚いカステラが入っていた。
高そうだ。

「圭ちゃんに拓海を連れて行って欲しいの」
「俺が?拓海がそう言ってるの?」

おばさんは困ったように笑った。

「拓海がってわけじゃないんだけど、ちょっと心配でね」

おばさんはまた拓海が変わってしまうんじゃないかって心配なんだ。
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