△第三篇

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「デートしたい!」

俺は目を開けて横を見る。

すぐ側に円の顔があった。

枕に埋まっていた顔を少しだけ上げた。

円は足をばたばたさせながら自分の枕に顔を埋める。

「デートしたいっ!」

同じことを言う。

この言葉に起こされて、急におねだりだ。

まだ寝ている頭でどう答えようかと考える。

一緒に住んではいるがのんびり出かけることはなかった。

買い物も円がいない間1人で済ませてしまうし、土日は円の母親捜しでデートと言う名目ではない。

体を横に向けて布団をかけ直す。

「何処行きたい?」

円は顔を上げる。

「何処でも!」
「ならまたお母さん捜しする?」
「それとこれとは違うよ・・・」

分かってるけど、今お金が足りない俺達が行く所なんか。

「お買い物は?」
「昨日買い出しに行ったし、晩ご飯は鮭でいいでしょ?」
「そうじゃなくて・・・」
「鮭は嫌だった?」
「何でも食べるよ!」
「なら鮭で決まりだね」
「だからそうじゃなくて!」

円は俺の頭が載っている枕を指で引っ張った。

「スーパーじゃなくて、ショッピングモールみたいなの」

あぁそういえば行った記憶がない。

俺の行動範囲は狭く、学校、図書館、スーパー、たまに本屋を往復している。

自分でもつまらない生活だなとは思っている。

「ショッピングモールか・・・近くの通りにバス通ってたよな」
「春服とか足りてるの?靴は?」
「冬と区別してないし」
「お、俺はしてる・・・!」
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