△第三篇

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「直樹」

意外な人物から声をかけられた。

俺は教科書から顔を上げる。

絵里子だった。

今にも泣き出しそうな顔をしている。
そんな顔で話しかけては欲しくなかった。

教科書を閉じる。

「どうかした?」
「絵里子やっぱりすぐに直樹のこと諦められない」
「うん」
「絵里子を振ったこと後悔するといいんだからっ!」

絵里子はあっかんべえをして立ち去った。

思わずふき出す。

これでこそ絵里子だ。
円と張るくらいな無邪気さだ。

閉じた教科書を鞄にしまって天板に突っ伏した。

放課後の講習会終了。

さすがに円は帰っただろう。

四六時中目を使って疲れた。
しょぼしょぼする。

視力も落ちてきたし、眼鏡かコンタクトにしようか迷う。

まだ黒板の字はぎりぎり見えるから大丈夫かな。

このまま眠ってしまいそうだ。

瞬間俺の意識は闇に飲まれた。



船に乗っている時のように体が左右にゆらゆらと揺れる。

何だろうと目をゆっくり開けた。

俺を見下ろす黒髪の男。

一瞬円かと思ったが違った。

「玄関閉まっちゃうよ?」
「長谷川・・・」

長谷川は何故かほうきを片手に俺の肩を揺すっていた。
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