△第三篇

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急かすようにインターフォンが何度も鳴り響いた。

学校から帰ってきて昼寝をしていた俺は重たい体を起こして寝室から出る。

頭がぼんやりしていて覗き穴も見ずに不用心に玄関のドアを開けた。

俺の名前を呼んで飛び込んできたのは女の子であった。

「直樹!」

俺の固まった体をぎゅっと抱き締めて胸に顔を埋める。

甘い香りが鼻孔をくすぐる。

「円か・・・びっくりした」

円を抱いて頭をぽんぽん叩く。

それにしてもこの格好は一体・・・。

季節外れのワンピースを着ている。

ついに円も女装にはまってしまったのかと不安がよぎる。

「・・・して」

円の発言に目が冴えた。

「直樹としたい」

一体何があったのだ。

相手から素直に行為を求められて拒否する理由は今は見つからないが、何かおかしい。

「駄目」

引っかかりがあるままやりたくない。

体を締め付ける力が強くなった。

「体じゃなくて言葉でコミュニケーションを取ろうな」

円は顔を真っ赤にさせて頷いた。

どうやら頭が冷えたらしい。



お茶を出して座らせた。
散歩に行ってしまったシロを捜す円。

「シロは恋人の所だよ」
「シロに恋人がいるの?」
「三毛猫君だよ」

先日公園でいちゃついているのを目撃した。

娘を持つ親になった気分であった。
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