△第三篇
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本気でバイトを探そうかな・・・。
俺は財布の中を覗き込んだ。
10円玉3枚に1000円札1枚。
しかもこの1000円はバスのカードを買うのに宮野から貰ったものだ。
財布のチャックをしめて溜め息混じりに机に顔をつける。
はる兄のバイトは体力が保たない。
荷物運びがほとんどだ。
いつもなら宮野にやらせることをわざわざ俺にやらせる。
大体がリタイアしてしまってお金を貰ったのはたった1回。
1000円だけだ。
お金が貯まるはずもなく2週間が過ぎようとしていた。
パンをもさつきながら椅子に浅く腰をかける。
「山神」
肩に手を置かれて振り向く。
「長谷川君!」
野沢から呼び出しがかかっていた長谷川君が帰ってきた。
何の用事かは知らない。
「山神も今からお昼?」
「うん」
「一緒に食べてもいいかな?」
「もちろん」
長谷川君は丸い弁当箱を巾着から取り出した。
きちんと手を合わせていただきますを言う。
ふたを開けると美味しそうなおかずが綺麗に並んであった。
玉子焼きと一緒に海苔が巻かれていて渦巻き模様が可愛い。
「藤森君は?」
長谷川君はプチトマトを摘む。
「生徒会室だよ。卒業する先輩達のために何かするんだって」
「もうそんな時期かぁ。僕達も3年生になるんだね」