△第三篇

□△
1ページ/13ページ

冬休みが終わって久しぶりの登校となった。
雪も溶けかけ、地面はぐしょぐしょになっていた。

休み期間中は結局1人で過ごすことが多かった。

シロの遊び相手をしたり、今までやっていなかった勉強をしたり、野沢にプリントを貰いに行ったり。

意外だったのは、円が毎日のように遊びに来なかったことだ。
彼曰く「忙しい用事」があるらしい。

内容を訊くと必死に隠そうとする。

怪しい。
何かおかしなことを考えているんじゃないかと心配になる。

俺は無理矢理訊こうとしないし、困ったら助けようとは思っている。

休み中に野沢と担任に会って来たからいいが、クラスメイト達は驚いていた。

教室の入口には人が群がっていた。

「藤森!死なずに帰ってきたな!」

隣の席の奴が背中を叩く。

「直樹大丈夫だったの?お腹壊さなかった?絵里子がいなくてさみしかったでしょ?」
「お前誰だよ。媚売ってんじゃないわよ」
「だって絵里子は直樹がいなくてさみしかったも〜ん」
「はいはい。絵里子さんの直樹さんだもんね」

友人達がふざける。

やっぱりこの空間にいるのが落ち着く。

俺はみんなが大好きで、みんなも俺を慕ってくれている。
素晴らしい環境だ。

ぞろぞろと生徒会役員やらが集まってきて話を聞きに来てくれた。

俺は手短にアメリカ留学中の話を終えるとHR終了の鐘が鳴るとすぐに席を立った。

「何処行くの〜?」
「俺まだお土産貰ってないんだけど」

友人達が止めにかかる。

というかさっきお土産を配ったじゃないか。
早速ボケやがる。

俺は引き留めてくれたみんなに向かって笑いかけた。

「大事な用事だよ」



物理室に入るといつもの2人が向かい合って座っていた。

ブレザーの袖をまくって本気モードに入っている円が微笑ましい。

円は俺の登場に気付いて握っていたシャーペンを放り投げてドアまで迎えに来てくれた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ